・音楽制作用パソコンの選び方①~種類別~
・音楽制作用パソコンの選び方②~メーカー別~
・・・に続き,今回は『パーツ別』ということで更に細かく解説をしていきたいと思います。
 
一言で「パソコン」と言ってしまいますが,パソコンは様々なパーツで構成されており,
初めてパソコンとして使えるようになります。
私が自作PCユーザーの為,自作PC向けの内容が強いと思いますが,
音楽制作用パソコンとして,是非抑えて置きたい項目をまとめてみましたので,参考にしてみて下さい。 


■OS

まず基本となるのが『OS』です。
投稿時点で,購入出来るOSとしては,
『Windows 7』『Windows 8.1』『Windows10』の3種類があります。

これから購入するのであれば,
『Windows10 Home 64bit』もしくは,
私が使っている『Windows10 Pro 64bit』のどちらかをオススメします。

現在のWindows10は,Windows最後のバージョンと言われています。
この辺りはMicrosoft社のさじ加減になってくると思いますが,
今までのXP→Vista→7→8・・・のように,
「OSが変わったからソフトが安定して動かない!」
・・・といった事から解放されるということです。
これは今までのWindowsと異なり,良い点なのかなぁと思います。

Windows10で安定した環境を構築出来れば,
今までより長いスパンで扱える可能性が高い。
という事ですね。

また,Windows10の場合32bitOSと64bitOSの2種類がありますが,
音楽制作のこれからを考えると『64bitOS』を選択しておいた方が良いと思います。

私が,2005年~2009年頃の同人音屋として活動していた頃に,
WindowsVistaで64bitOSが発売されました。
※正確にはWindows XP x64Editionというのがありました(^^)

当初は,色々と不具合がありすぎて,「こんなOS使えるか!」という時代もありましたが,
今はDAWだけでなく,ソフトシンセ,プラグインも,64bitへの対応状況もかなり良くなっています。
広大なメモリ領域を使えるのも64bitOSのメリットです。
実は32bitOSの場合はメモリの認識上限が4GBしかありません。

また,Windows10 Home 64bit のメモリ認識上限は128GBです。
一方,Windows10 Pro 64bitのメモリ認識上限は2TBです。
現在の状況では,かなりのハイスペックPCでも64GB程度なので,
HomeでもProでもどちらでも構いませんが,そのうちHomeの上限では頭打ちになってくるかもしれません。
非常に負荷のかかる音楽制作をする上で,メモリ容量は少しでも多いほうが良いです。

古いソフトシンセの製品の中には,32bitでしか動作しないソフトもあるため,
過去の資産をまだまだ使いたいという人には,32bitの方が有利な場合もありますが,
特段の事情がない場合には,
Windows10 Home 64bit もしくは Pro 64bit を購入しましょう。

余談ですが,ヤフオクやAmazonマーケットプレイスなどで売られている,
Windows OSの安い品は,粗悪な海賊盤が物凄く多いので注意したほうが良いです。
最初のライセンス認証がOKでも,数カ月後に突然ロックされたりという事例もあるようなので,
信頼出来るPCショップや,Amazon.co.jpで販売されている製品を購入するようにしましょう。

 
■CPU



CPUとは「Central Processing Unit」の略で,日本語に訳すと『中央演算処理装置』
その名の通り,パソコンの中心で様々な演算処理を行うパーツです。
非常に数多くの製品がありますが,主にパソコン用のCPUを生産しているのは,
『Intel』と『AMD』の2社。どちらもアメリカの会社です。

音楽制作用としては,
Intelの『Core i5』,若しくは『Core i7』というシリーズを購入しておけば無難だと思います。

AMDのCPUでも良いと思いますが,個人的には少し玄人向けかと思います。
DAWの推奨環境などをみると『Intel Core 2 Duo以上または互換プロセッサー』などと記載があるので,
シェアとしてはIntelの製品の方が多いのかなぁと思います。
自作ユーザーの間では,Intelよりコストパフォーマンスが高いと言われていますので,
スペックの割には安価に購入できる場合が多いようです。
詳しくは,マザーボードの項目で書きますが,Intelほどソケットがころころ変わらないので,
ある程度年数が経過した後もパーツの入れ替えがラクに出来るのが良い点でしょうか。

どちらでも共通して言えることは,音楽制作用の場合,
載せているコアの数より,定格クロックが高いほうがより良いパフォーマンスが得やすいと思います。
同じ価格帯の製品で迷ったら,コアの数では無く,少しでも定格クロックの高いモデルを選びましょう。

また,CPUの性能は基本的に価格に比例します。
ただし,あまり高価でもコストパフォーマンスが悪いので,
価格帯としては,3万円~4万円程度のCPUで性能は十分では無いでしょうか。


■マザーボード

 

「母なる基盤」とでも訳しましょうか。それぞれのパーツを統括する基盤です。
パソコンを起動して,一番最初に表示されるメーカー名が,
マザーボードのメーカーと思ってもらって良いと思います。 

汎用規格で,単品販売しているメーカーには,
『ASUS』『GIGABYTE』『MSI』などがあります。
一応、国内でのシェアが最も高いのは『ASUS』らしいです。

自作パソコンユーザーでなければ,聞きなれないメーカーばかりだと思いますが,
ほとんどが台湾のメーカーです。 
あまり種類は多くありませんが,『Intel』純正のマザーボードもあります。

どのCPUを使うか確定させると,次に決めないといけないのがマザーボードです。
CPUにはそれぞれ「ソケット」と言って,対応ソケットが決まっています。
また,マザーボードの性能を表すのが「チップセット」です。
これを細かく解説すると,1記事出来てしまうのでここでは割愛します。
「ソケット形状(LGA1150) チップセット」などで,検索をした方が詳しい情報が得られます。


■メモリ

  
良く作業をするテーブルの大きさに例えられますが,
メモリ容量が大きければ大きい程,多くの作業を1度にこなすことが出来るようになります。

非常に多くのメーカーがありますが,有名なのは「Corsair」や「UMAX」などでしょうか。
国内メーカーが良ければ「CFD(BUFFALO)」や「IO DATA」などの製品があります。

今まで「SanMax」「Patriot」「CFD」「A-DATA」など,様々なメーカーのメモリを使いましたが,
どのメーカーでも大きな違いがわかりません。 
それほど壊れるパーツでもありませんので,規格さえ合っていれば
永久保証を謳うメモリならどこのメーカーの物でも良いと思います。
相性の問題や,最近は複数チャンネルのメモリが主流なので,
同一メーカー,同一シリーズで揃えた方が良いと思います。


■SSD

  

当初は,HDD(ハードディスク)と比べ,1GB辺りの単価が高く,耐用年数が短いなど,
マイナス面も言われていましたが,最近はコントローラーが進化したこともあって,ほぼ問題なく使えます。
何が良いかと言われると,圧倒的なスピードの速さです。
一度SSDを体感するとあまりの快適さにHDDには戻れません!
簡単に思ってもらうと,USBメモリの容量が大きい版です。

有名なのは,「crucial」や「Intel」。
国内メーカーならば,「CFD」や「東芝」の製品があります。
私は台湾の「Transcend」というメーカーの製品を使っています。
ソフトサンプラーなどでありがちな,大きなデータの読込もあっという間に終わり,
非常に快適に使うことが出来ます。
私は256GBのSSDを2つ搭載して,高速なSSDの読込スピードを更に上げる方法を使っています。 (RAID0)
詳しくは,『SSDの実力』をご覧ください。


■HDD


 
一昔前まで,ストレージと言えばハードディスクドライブが主流でした。
現在でも1GB当たりの単価が安く,耐用年数が長いため,広く使われています。
非常に衝撃に弱い精密機器なので,取扱には注意が必要です。

HDDメーカーは買収や合併なので,ころころ名前が変わっています。
有名なのは,「Western Digital」や「Seagate」。
国内メーカーでは「TOSHIBA」がありますが,生産拠点は海外です。
高価なリテール品(化粧箱に入った製品)を買う必要は無く,安価なバルク品で十分です。

昔からの製品なので,システム用のストレージとしては,やはり読込の遅さが気になります。
システム用ドライブはSSDで,データ保存用はHDDという使い方が良いと思います。

DAWの推奨環境に「7200rpm以上のHDDドライブ」などと書いて有ることがあります。
一般的にノートパソコン用の2.5インチサイズのHDDは「5400rpm」です。
またデスクトップ用でも回転数を可変するタイプがありますので,
音楽制作用としては,7200rpmのHDDを購入しておいた方が良いと思います。
予算の許す方は,SSDとHDDの良いとこ取りをした,ハイブリットタイプもオススメです。 


■光学ドライブ

  
私が最もこだわらないパーツ。光学ドライブと言うと聞きなれない方もいると思いますが,
CDやDVDを読み込むドライブです。
私はなぜか「LITE-ON」という台湾メーカーが好きです(笑)
何と言っても安い事と,付属するライティングソフトが「Nero」だからです。
昔は,無期限で使える物が付属していたのですが,最近はトライアル版なのでちょっと微妙なのですが。
品質も耐久性もそれほど良いとも思いませんし,何台か壊れましたし,作動音も爆音です。
けど、何か好き何ですよねぇ。「LITE-ON」
・・・結果,「LITE-ON」にこだわってますね(笑)

メーカーとしては,「パイオニア」「PLEXTOR」の製品が高品質と言われています。


■電源ユニット

  

パソコンに電気を供給する電源ユニットです。
非常に数多くのメーカーがあり,日本製コンデンサを使っている製品が高品質と言われています。
あまり安いものは,中国製の粗悪な電源もありますので注意が必要です。

コストパフォーマンスが良いと感じているのは「玄人志向」という国内メーカーですが,
その名の通り,あまりサポートをしない分安く販売しているメーカーなので,
初心者の方には敷居が高いかもしれません。

1つの目安として,「80PLUS認証」という物が有ります。
電源変換効率が80%以上あることを保証しているという、高効率な電源であるという認証です。
500W電源で,80PLUS認証だと,最低でも400Wの容量を確保していると言うことです。

高効率な順に
80PLUS Titanium > Platinum > Gold > Silver > Bronze > 80PLUS
・・・という,どこかのプラグインバンドルのような区分けですが,
私は必ず,80PLUS Bronze以上の電源を選ぶようにしています。

パソコンのパーツの中で特に消費電力の大きなパーツは,CPUとグラフィックボードです。
動画編集やハイスペックを要求されるゲームなどをするために,
高性能なグラフィックボードを載せる場合には消費電力に応じた,
大容量の電源にしておいた方が良いと思います。

私は,80PLUS Goldの630W電源を使っていますが, 
そこまで高性能なグラフィックボードを載せていないので,ちょっとオーバースペックかもしれません。
ただ、今までの経験上,パソコンへ負荷を掛ける処理をすると突然電源が落ちる!
ブルースクリーンが出る!という深刻な不具合は,電源の容量不足が原因だった事もありました。
特に大きな負荷のかかる音楽制作用では高性能な電源を用意するようにしましょう。

少し効率が落ちますが,パソコン内部の電源ケーブルが直付けではなく,
プラグインタイプの物を買うと,ケース内の配線をスッキリさせる事が出来ます。


■ 冷却ファン

  

基本的に別途購入は不要と思います。 

私は,マイクを使った宅録をしない為,静音である必要もなく,オーバークロックをしない為,
故障した場合を除いて,別途購入をしたことはありません。
通常CPUを買うと,純正のCPUクーラーが付属します。 
また,どんな安物PCケースにも冷却ファンが前と後に2つ付属しています。
それで十分な事が多かったです。

ただ,歌い手さんや,楽器をマイク収録する方は,静音パソコンにこだわっても良いと思います。
そこそこ良いPCケースと,
CPUクーラーとケースファンを大径の物にして,HDDを使わずSSDのみ。
グラフィックカードはファンレスにするか,オンボード。
光学ドライブと電源ユニットを静音仕様にすればそれなりの静音パソコンは作れます。

ファンレス電源,ファンレスCPUクーラーなる製品もありますので,
無音パソコンの制作も物理的には可能ですが,
まず、排熱が難しく安定して動作しない可能性が高いので,挑戦しないほうが良いでしょう(笑)


■グラフィックカード


  

数多くのメーカーが販売していますが,マザーボードと同じく台湾メーカーの製品が多いです。
どこのメーカーの製品でも同じチップセットで,同じメモリ容量なら,
性能はほぼ同じと認識して貰えば良いです。 
大きく分けると「Geforce」と「Radeon」の2つのチップセットメーカーがあります。

動画編集やゲームをせず,音楽制作用ならばどちらを選んでも良いと思います。
私は,経験上Radeonの方が不具合発生率が低いように思っていましたが,
Geforceの方が不具合発生率が低いという情報もあり,どちらが良いとは言えません。
比較的,相性による不具合が出やすいパーツかなと思います。

Radeonは派手な発色で,パッと見るととてもキレイにモニタへ表示してくれます。
Geforceは自然な発色で,Radeonと比較すると地味に見えますが,疲れにくいかなという程度。
私は,1万円~1万5000円程度の製品を選ぶことが多いです。
「GPU 比較」などで検索すると,もっと詳しい解説をされているサイトさんがあります。


■インターフェイスカード

  
最近では,多くの機能がマザーボードに付加されるようになりましたので,
全く使わない人も多いと思います。

使っているマザーボードの機能を拡張する事が出来るボードです。
USBポートが足りない時など,様々なインターフェイスカードが販売されています。

音楽制作用としては,シリアルポートの増設も可能です。
旧式のMIDI音源(SC-88Proなど)が,
今のパソコンでもMIDIインターフェイスを使わず接続可能です。
※対応ドライバがあるかどうかが問題ですが・・・。

また,最近は少なくなって来ましたが,
IEEE1394に対応しているマザーボードは少数なので,
対応するオーディオインターフェイスを繋ぐ場合にはIEEE1394の増設ボードが必要です。

IEEE1394というのは,パソコン業界や,映像業界の呼び方なので,
我々には『FireWire』という呼び方の方が馴染み深いですね。
どちらも同じものなのですが,何故か呼び方が違います。

少し古い知識かもしれませんが,IEEE1394カードの増設をする時,
チップセットに違いがあり,FireWireオーディオインターフェイスとの相性が悪い製品があります。
音楽制作用には,『TI(Texus Instruments)社製』のチップの製品が良いようです。


■サウンドカード


  


パソコンショップで購入できる製品としては,「ONKYO」や「Creative」などの製品がありますが,
どれもオーディオ用や,ゲーム用の製品ばかりなので,まず購入することは無いと思います。
音楽制作用には,オーディオインターフェイスの導入が必須です。 

大きな楽器店などでは,音楽制作用に適したサウンドカードタイプの製品を扱っている場合がありますが,
種類が少なく稀です。使い勝手の点からも外部接続タイプのオーディオインターフェイスを使っている方が,
圧倒的に多いと思います。
オーディオインターフェイスの選び方については,後日詳しくまとめたいと思います。


■PCケース

  
 
パソコン本体の外見のほぼすべてと言っても良いPCケースです。
家電量販店で売られているパソコンでは,ほとんど見かけることが無くなりましたが,
自作パソコンやショップパソコンでは,今でもこういうタイプのミドルタワーケースも多いです。

様々なメーカーがありますが,デザイン重視でも,価格重視でも,好きに選べば良いと思います。
多くはスチール製ですが,高価なケースにはアルミ製のケースもあります。放熱性が高く,頑丈で軽量です。
あまりに安いケースだと,材質のスチールが極端に薄く,
ネジ止めが出来ないような製品もありますので,
最低でも電源無しで5000円程度の予算を見ておくと良いと思います。

私は基本的に5000円程度のケースでパソコンを作り,
3~4年程度で,ケースごと買い替えをしますが,
高級なフルアルミケースを購入し,中身だけ入れ替えて行く人も居ます。
この辺りは完全に好みの話です。
マイクを使った宅録をする方で少しでも静かなパソコンが良いという方は,
高級なケースの方が良いかもしれませんね。

ケースの大きい順に,
フルタワー > ミドルタワー > ミニタワー > スリム=キューブ という呼び名があり,
大きい順に,
E-ATX > ATX > MicroATX > FlexATXのサイズのマザーボードに適合します。
ATX対応のミドルタワーケースに,MicroATXのマザーボードを載せることは出来ますが,
MicroATX対応のミニタワーケースに,ATXのマザーボードを載せることは出来ません。

音楽制作用として選ぶ大きさは,ミニタワー以上の大きさのケースをオススメしておきます。
最もポピュラーなATX規格の電源に対応しているケースが多く,種類が豊富に選べる事と。
そして,スリムケースや,キューブケースと異なり,余裕が有るため放熱性が高い事。
そして,作業スペースが広く取れるため自作がしやすいです。


さて,長文になりましたが,パーツ別の選び方は以上です。
不明な点や間違ってるよ!って点があれば,コメント欄でお知らせ下さいね。